山羊座の神話
山羊座は、ギリシア神話の牧神パーンの姿を現しているといわれます。
上半身が角の生えた山羊、下半身が魚という姿をしています。
神と人間の間に生まれた半神半人で、もともとは人間の顔に山羊の角、全身が毛深く山羊の臀部と脚をもっていました。
その姿はすこしグロテスクでたしかに恐ろしいものですが、性格はいたって陽気で楽しいことが大好きな愛嬌者。
人を笑わせたりユーモアの精神が旺盛なので神々の間では人気者でした。
芸術や音楽の才能に秀でていますが、それでいてどこか抜けている。
おちゃめな牧神パーンはその姿にもかかわらず憎みきれないタイプなのです。
そして、牧神パーンのもうひとつの大きな特徴は大の女好きなこと。
実際モテるかどうかはさておき、そのプレイボーイっぷりはかなりのもの。
キレイな女性を見かけるとすぐに追いかけてはくどきまくります。
女好きが関係してこんなエピソードがあります。
あるとき川のほとりで開かれていた神々の酒宴で牧神パーンが笛を吹いていると、笛の音と酒の匂いに引寄せられて巨大な怪物テュフォンが現れました。
テュフォンは自分が神の宴に招かれていなかったことに激しく腹をたて怒り狂います。
突然の怪物の乱入におどろいた神々はパニック状態になり逃げ出しました。
パンも山羊の姿に変身をして一目散に逃げたのですが、途中で追いつかれそうになったため、川に飛び込み魚に変身して逃げようとしました。
ところがあまりにもあわてていたため、川に浸かった下半身だけが魚になり、上半身は山羊の姿のまま、どうにか地からづくで泳いで逃げたそうです。
このあまりにも滑稽な姿を見た神々はみな大笑い。
その楽しい様子を喜び星座に召し上げたということです。
あまりにもドジすぎる牧神パーンですが、その本質はとても力強いものです。
生まれながらのハンデがあっても気にせず自ら笑い飛ばし、馬鹿にされても、どんな逆境にもめげずに力いっぱい生き抜く姿は生命力であふれています。
山羊や魚に変身した牧神パーンは、その力が海底から山上までの全世界に及ぶことを表わしているといわれます。
これが英語等で「全て」をあらわす接頭語Pan-の語源になったということです。
ちなみに牧神パーンの混乱や恐怖が、パニック(Panic)という言葉の語源ともいわれます。
どんなときでも諦めず、本当の自分を見失わないパーンの姿は、山羊座の性質に通じるものがあります。